ずぶ濡れの犬


~リュウ~

生後1ヶ月半頃、1度目のワクチンへ連れて行った時、突然注射針を刺されたリュウは、ぎゃんと泣きました。

その1ヵ月後、2度目のワクチンの時は、何故かずっと笑っていました。

私は今でも、あの時の光景が瞼の裏に焼き付いて離れません。強くて、可愛くて、あどけない。
リュウはまるで、天使でした。

リュウは、土手のホームレスが飼っている犬。
正真正銘、ナナの兄弟です。
いつかリュウのことを書きたいと思っていましたが(過去に軽く紹介した事はあります)こういう形で書く事になるとは思いもしませんでした。

リュウは子犬の頃捨てられ、その後ホームレスによって飼われることになりました。私はまだ子犬だったリュウと出会い、保護しようと奔走しましたが叶わず、 食事や医療などのケアを通じて、6年間彼を見守り続けて来た、いわば「足長おばさん」です。リュウは私にとって、この広い世界の中で、最も大切な存在のう ちの一人。誰の前に出しても恥ずかしくない、立派な犬です。

思い入れがあるから立派だと称えている訳ではありません。

リュウは立派な犬です。

それをこれからお話します。

育つ環境を選べなかったリュウは、飼い主になったホームレスによって、それなりに可愛がられていました。よくお散歩へも出掛け、テント小屋の中に入って寝 食を共にし、草の香り、そよ風を感じながら、それなりに暮らしました。狂犬病注射・ワクチン・フィラリア投薬なども全て私が行い、1歳半の頃、去勢も済ま せました。食事に困る事もありませんでした。無くなる頃を見計らって、必ず土手へ運ぶようにしていたからです。

でも、人知れず、大きな苦労も背負っていました。土手の犬の中で、リュウは特にその標的にされ、体に醜いあざを作っては、痛みに喘ぎました。

「死んじゃえ。死ね。」

「待って、今度は俺にやらせて。」

拾い集められた石たちが、容赦なくリュウの体に直撃します。

投げるのは、反抗期を迎えた高校生・中学生だけではない。
時には、土手で遊ぶ小学生位の子まで、リュウに石をぶつけて遊びました。

私は長い土手通いで、偶然その現場を数回目撃しました。

そして湧き上がる怒りに身を任せて、大声を張り上げ、子供たちを虚しく叱りました。

石を投げられ、右目が腫れ上がったリュウが、私を見つけて尻尾を振る。

「ぼくに会いに来たの?ぼく、やられちゃったよ。」懐っこい笑顔を浮かべて。

悔し涙を流しながら、リュウを抱き、病院へと運ぶ。
一緒に暮らすホームレスがテント小屋に居る時は、リュウは怪我せずに済みますが、ホームレスが飲み歩いて留守にすると、庇ってくれる人がいなくてリュウはやられ放題。
優しいリュウは、向かっていくことも、逃げることもしない。

リュウの受難は、それだけに留まりませんでした。

リュウが2歳のある日、会社から帰ると、バスの中から、土手の橋の下が燃えているのを見つけました。リュウの小屋がある場所。消防車やパトカーが数台到着し、鎮火も間近に思えましたが、胸騒ぎを覚え、降りて急いで向かいました。

やっぱり。

燃えていたのは、リュウの小屋。飼い主のホームレスが、警察に何か事情を聞かれ、しきりに首を振っていました。「どうした?」と近寄ると、「小屋、燃やされちゃったよ。」と返って来て、「リュウは?」と聞くと、「分からない、怖くて小屋の中見れない。」と。

おそるおそる、煤で黒焦げになったテント小屋の扉を開けました。

とても怖かったです。リュウがまる焦げになった姿を見てしまう気がして・・・。

「居ない。……居ないね、ほら、居ないよね?」と私。

「あれ?リュウ?リュウー!居ないのか?小屋に居ないのか?」とホームレス。

繋がっているはずのリュウがテント小屋に居ない。どういう訳だろう。考え込んでいるうちに、警察や消防が少しずつ姿を消しはじめました。

リュウ、どこ?

気がつくと、あたりはすっかり闇に変わっていました。

もう一度テント小屋を覗こう。
一歩前へ出た次の瞬間、黒い物体が視界をかすめたので、ハッと振り返りました。

ん?リュウ?

遠くから私たちを目掛けて走ってくる。
どんどん近づいてくる。

それは間違いなく、リュウでした。

お尻の方の毛が一部黒焦げになって、繋がっていたはずの紐は噛み砕かれ、雨でもないのにビショビショに濡れていました。その状況を見て、私は鳥肌が全身を駆け巡った。

リュウは燃え盛る小屋から逃げようと、必死で紐を噛み千切り、その後体についてしまった炎を消す為に川へ飛び込んだと知ったからです。体には、川へ飛び込んだ時についたであろう、ゴミや水草がぎっしり。そして、川の独特の臭いが染み付いていました。

その姿に、私は、何と言うか、神を見た気がしてしばらく動けませんでした。

この子のこの目の輝きは、そして生へ執着するこの勇敢な姿は、いったい何処で培ったものだろう。そんな風にリュウを誇りに思いました。

リュウは、私が今まで出会ってきた中で、おそらく一番の勇者です。

そのリュウに、今日会いに行きました。

3日間、飲まず食わずの状態で、木に繋がれたリュウは、精一杯尻尾を振って、私を歓迎してくれました。保護活動仲間のKさんにも、愛想よく挨拶してくれました。今日一日世話をしてくれる人間にリュウを頼み、

「ごめんね、リュウ。間に合って良かったよ。明日、迎えに来るからね。」

そう言って土手を後にしました。

明日、私はリュウを土手から出します。

そして頑張ってきたリュウに、未来をプレゼントしなくては。


明日以降、詳細等を書いて、里親募集する暁には、皆さまにはリンクなどを厚かましくお願いする事になると思いますが、どうかよろしくお願いします。

「コメント返し遅くなってごめんなさいね。今日は色々あって、なかなか思うように時間が取れないからちょっと遅くなるかもしれないって。リュウはナナちゃ んのお兄ちゃん。絶対に幸せにしなくてはと、ハハが又張り切っています。写真は昔の物であまりハンサムに撮れていないけど、実物はとってもハンサムなリュ ウ君。明日頑張ってボロカメラで写真を撮ってくるって。ランキングに参加しているのでぽちっとクリックして応援してね。かつくんより、ペコリ。」

703号室かつくん&なな

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