つづきです。
海子のさびしげな佇まいが頭を逡巡し、一睡もできないまま朝を迎え私は管理会社に電話をかけることに。怖かったからできれば避けたかった。でも避けられないと思いました。
私「もしもし。私は●●アパートの近くに住む者ですが、2週間ほど前にそちらの管理する●●アパート付近で子猫を見つけ、悩んだあげく飼いたいと思っているのですが、姿が見つかりません。管理会社のほうにお聞きすればなにかわかるかもしれないと考え・・・・・・お電話しました」
担当者Nという女性「猫たちは住民さまの苦情により処分いたしましたが・・・・・・」
私「え? 子猫たちをですか? 子猫たちを処分したのですか? どのように? 保健所とかへ持っていった・・・・・・つまりは、そういうことですか?」
担当者Nという女性「はい。そうですが? 住民さまがたいへん迷惑をしておりますので」
私「あ、そうですか・・・・・・今後もまた処分することはありえますか?」
担当者Nという女性「はい。住民さまがご迷惑を被っていらっしゃるので、今後も苦情等が来次第、迅速に対処していきます」
私「はあ・・・・・・わかりました。お忙しいところ失礼いたしました」
担当者Nという女性「失礼いたします」
この人はいったいなにを言っているんだろう? 抑揚のない声で淡々と。
マイノリティは私のほうだ・・・・・・ブログで吠えていい気になって、世間の冷たさがどこか遠い世界のように思えて・・・・・・まわりはみんな犬が好きで猫が好きで大切に育てていて・・・・・・。
管理会社が処分したというのが私の仮説でした。だから当たっていたのです。
子煩悩なはずの海子が子猫のもとへ戻らず何時間も私たちのそばを離れなかったこと。深夜もう一度会いに行ったときも海子はひとりで外にいたこと。お乳がぜんぜん張っていないこと。乾いた一方的な張り紙。大袈裟なほど立派な立ち入り禁止柵。禁止柵を設置した際に苦情源(子猫)を見逃すはずがないこと。本能的にヒソヒソ子育てをするはずなのに、海子は夜鳴き。
子猫を探す海子。大声で子猫を呼ぶ海子。
泥だらけの手足で駆けずり回りながら我が子を求める母の姿。
母と引きはがされ与えられたばかりの命を奪われた子猫たち。
それらが真実みを帯びて一気に自分に襲いかかって来て、私はめまいが起きました。夜まで待てない。餌やりのふたりとの約束の時間まで待てない。待つ必要もない。
次に1本でも苦情の電話が管理会社に鳴った時点で、海子はなんらかの方法で処分される。
餌やりのふたりも、海子が住民に嫌われ足蹴にされることを嘆いていた。海子は夜鳴きしている。海子は建物の敷地内にいる。入ってはいけないと人間が勝手に決めた敷地内に。餌やりのふたりを頼りにして、甘えたくて、過去には女性のほうの家にも入り込んだことがあったと聞いたし・・・・・・海子はお腹がすくし、ほかに行く当てもなく、あの死のアパートの中にいる。
海子は近隣迷惑になるほど夜鳴いている。
次苦情が来たら処分される。消される。
私は手の震えと心臓の鼓動を抑えられませんでした。
そして、ひさびさに爆弾がドカーン!! と爆発したかのごとく、大きな怒りを感じました。
バカが。子猫たちは害獣じゃない。
無抵抗な子猫たちへの陰湿な仕打ち。苦情に対処するほかの方法は考えなかったの?
せいせいと律儀に仕事をしたつもり? ただの弱い者いじめや迫害じゃなくて?
だれの手も借りず海子が毅然と命がけで産んだ尊い子猫たち。
悲しい世界に産み落とされたねえ。悲しいねえ、悲しいねえ。
じぶんの負の感情をねじ伏せるには、もう母体を保護するしか方法がありませんでした。
それから数時間後。実は先日書いた以上に保護に苦戦し、703号室まで道具を取りに行ったり来たりの末、ようやく海子を無事に連れて帰れたのです。今思い返しても奇跡的で・・・・・・。
私は勝手に連れて帰らないという餌やりのふたりとの約束を守りませんでした。
夜、パンとビールと事情を書いた手紙を持って餌やりの2所帯を訪ねました。
1時間以上外で待っていたのですが、なかなか帰ってこなかった男性には手紙を。
海子を家に閉じ込めて飼うのはかわいそうだと主張していた女性とは直接話をすることに。
約束を守れなかったことを詫び、子猫たちが保健所で処分されたこと、担当者の女性の名前と話の内容、海子の命が切迫して危ないこと・・・・・・海子が我が家のケージでくつろぐ写真を見せながら丁寧にを伝えたところ、女性は理解を示し「よろしくお願いします」と任せてくれました。
こうして、海子は703号室にやってきてくれました。
余談ですが海子は私が今年の元旦に取り逃がしさんざん探していた猫でした。
あのとき保護できていたら、今回の犠牲はなかったので海子に申し訳ない気持ちです。
しかし時間は巻き戻せません。これからは海子と繋がる良縁を探していくことで罪を償います。
おおよその人間にとっては、取るに足らないようなたった一匹の汚れた野良猫かもしれませんが、海子はいっしょうけんめい生きてきました。立派な女性だと思います。
LOVE!
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