THE 保護活動1


~まえがき~

ごめんなさい。今回は福多朗は出ません。

(第1章 出会い、別れ、そしてまた出会い)

ある町にみすぼらしい野良猫が住んでいました。

名もなき野良猫は、いつも傷だらけ。

常に空腹。

汚水や生ごみで腹を満たしながら、右へ左へ、所在なく彷徨い歩くしかなかったのです。今の一瞬を生き延びれる場所を求めながら、トボトボトボトボ。

あたたかい寝床や、撫でてくれる手とは無縁の生活。

生きる意味などどこにもない。

死に方を知らないから、死なないだけの日々。

そんな野良猫にある夜、転機が訪れました。

20代後半の女の子と、その夫に出会ったのです。

女の子の母親は、野良猫のテリトリー内で飲食店を経営しています。飲食店を見つけた野良猫は、たまにもらえるマグロの刺身を目当てに、足繁く飲食店に通うようになっていました。

女の子は、外の世界に野良猫が増えるのを好みません。そこで、夫と共に、野良猫をつかまえ、去勢手術を受けさせることにしたのです。

空腹の野良猫は、まんまと女の子の仕掛けた罠にはまり、動物病院へ連行されました。

気がついた時には、去勢手術が終わっており、女の子の住むアパートのケージの中にいたのです。

「イタタタタタ! なにすんだよ]

「ごめんね。1週間のがまんだよ。手術の傷が癒えたら、また外に戻してあげるから。1週間だけお世話させてね」

朝が来て夜が来て朝が来て夜が来て……

とうとう、1週間が経ちました。

女の子と夫は、予定通り、ぽんたと名づけた野良猫を、外に連れて行きました。そしてキャリーのフタを開け、ぽんたを逃がしたのです。

虚を突かれたぽんたは何度も振り返り、なかなかその場を立ち去ろうとしませんでした。

そこではじめて、女の子は、後悔をおぼえたのです。

いいえ。

実はぽんたを家に入れた時から、ずっと迷っていました。ぽんたを野良猫に戻したくない。でも、家では飼えない。ぽんたはハンデがあるから、誰も里親になってくれないかもしれない。なら、外に放すしかない。

女の子を見上げたあと、ぽんたは腹を決め、ようやく歩き出しました。

女の子はポタポタと涙を流しながら床に座り込み、去り行こうとするぽんたの背中に叫んだのです。

「おねがいぽんた、やっぱり行かないで!! お家に帰ろう」

闇に溶け込むぽんたの後姿を思い出しながら、涙の女の子は、姉に電話口で言いました。

「アンちゃん、私、もう1回、ポンタをつかまえたい……」

「なら、つかまえに、行く?」

「今から?」

こうして妹は、再びぽんたに罠を仕掛けることにしました。そして、知恵比べ根比べを繰り返しはしましたが、ぽんたはやはり食べ物の誘惑に負け、放されてから24時間後に、再び妹のもとへ戻ってきたのです。

「ぽんたの真っ白だった肉球が、たったの1日で汚れてしまった……かわいそう」

ぽんたのキャリーを抱きながら、妹はまた泣き崩れました。

(第2章 ぽんたとの毎日)

家での生活を送ったことのなかったぽんたは、いろいろ戸惑いました。食事の時間、トイレの場所、細かい規則。狭い空間、絡んでくる犬や猫、そして、距離を縮めようとする人間。

「シッシ、あっちへ行きな!」

こう言われつづけてきた元野良猫。誰からも必要とされなかったぽんたは、以前の生活と今の生活のギャップに驚いたのです。でも、なかなか悪くないと思いはじめました。

「あたたかいね、ここ」
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「犬もいいヤツ多いんだね。知らなかった。犬のまめはぼくにはじめてできた友だち」
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「ねえねえ。今日は何時に帰ってくるの? ぼく待ってるから」
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妹とぽんたの距離は、時間を重ねるたびに縮んでいき、いつの間にか、お互いいなくてはならない存在にまでなりました。

朝が来て夜が来て朝が来て夜が来て……

「おはよ。今日もぽんちゃんが好き」
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ぽんたに対する家族希望のメールが届いたのは、ちょうどその頃だったのです。

「はじめまして。私は、ぽんたくんを家族に迎えたいと考えている者ですが……」

メールを読んだ妹は、言葉を失ってしまいました。

つづく

ペットシッター「にくきゅうのおせわ屋」をはじめました

お留守番をがんばるかわいい家族が「お帰り!」と目を輝かせて出迎えてくれるよう、安心・安全に最優先で心を込めてお世話します。

にくきゅうのおせわ屋

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