こんにちはナナちゃん
15年前の今、ナナはお母さん犬のお腹で、ほかの6頭のきょうだいたちと
この世に誕生する準備をしていたね
そして3月ごろ
ナナは7きょうだいで生まれてきた
生後1カ月を過ぎたナナたちは、ゴミのように捨てられ
その後気性の荒いホームレスに番犬として引き取られ
「不遇の犬猫のためになにかをしたい」
と息巻く若かりし日の私と出会った
ナナときょうだいたちはさんざんな目に遭い
悪天候の荒れ地を這い
暴力や飢えや乾きと死闘をし
7頭のうち3頭が餓死や焼死で
若くして亡くなってしまったよね
せっかく生まれてきたのに
とても残念だった
当時は自分の非力を恨み、泣いて泣いて泣いてまた泣いた
私は力がほしかった
気性の荒いホームレスのもとからナナたちを連れ帰る力がほしかった
あのとき、ナナのきょうだいたち3頭が惨めに朽ちていったとき
私はもう一頭も死なせないと誓った
ほんとうに誓った
それまでの人生の中で、いちばん固く胸に誓った
以後何年もかけ、ナナと生き残ったきょうだいたちを保護し、終の棲家に案内した
いつか自分が死ぬとき、死の床で
まちがいなく私は
ナナときょうだいたちの姿を思い出すと思う
やれなかったことも
やれたことも、ぜんぶ
ナナは私が死地から連れ帰った最初の犬
あの頃のナナは怖がりで怒りっぽくて
だれでも構わず噛んだよね
「この子、家庭犬になれるかなあ・・・・・・」
13年前、2歳になろうとしていたナナを私はひそかに「不良娘」と呼び、不安の中で保護した
保護するか
あの場所で死なせるか
その二択しかなかったから
ナナはとまどいながらも私と暮らしてくれた
賃貸コーポの2階の一室がナナのあたらしい家
2DKの細長い間取りだったよね
考えてみると
ナナのほうにも選択肢がなかった気がする
フルタイムの共働きで留守番ばかりの環境にも
ナナは文句をいわずよく耐えてくれた
はじめての散歩をおぼえてる?
あのときナナは車に怯えてガクガク震え、おしっこを漏らしてしまったね
結局一歩も歩けずに、抱いて帰ったのが、昨日のことのよう
でも、のみこみの早いナナは、さすがだったね
体内の細胞が総入れ替えしたかのごとく
どんどんどんどんどんどん変化して
気がつくとやさしくておだやかな犬になっていた
まだべべとナナのふたりっこだった時代、みんなで家族旅行へ行ったよね
ナナははじめての旅行に大興奮
ドッグランや山を走りまわって、意外なほどはしゃいだ
旅でナナの屈託のない笑顔を見つけた私は、この犬を幸せにしたい、と思った
それもまた昨日のことのよう
ナナ、年を取るのはイヤだねえ
視力聴力が低下し、後ろ足がうまく立ちあがらなくて
体が思いどおりにいかずイライラするよね
腎臓病の治療も辛いでしょ?
物忘れもだんだんひどくなって・・・・・・
ナナは半分以上妹を忘れてしまった
そしてナナはときどき、私でさえも忘れてしまう
ナナはべべを忘れ、べべを噛み、猫たちに吠えかかり、たまに私を噛むようになってしまったね
一瞬忘れちゃうんだから、まあ、しょうがない
けど正直なんだかさびしい
「茶色のほうの犬は噛むかもしれないので、さわらないでくださいね」
うちに来るお客さんにナナを指さし、こう伝えなければならないのが悲しい
ナナをそんな風に紹介するのが悲しい
だから私は最近ナナに「こんにちは」を連発する
「こんにちはナナちゃん」
そして胸の中で歌う
「こんにちはナナちゃん(赤ちゃん) わたしがママ~よ♪」
失っても再び私たちは会える
忘れたら一からはじめればいい
そういう意味でなら、ナナとの過去はもういらない
捨てる
こんにちはナナちゃん
生きていてくれてありがとう!
I LOVE NANA
ペットシッター「にくきゅうのおせわ屋」をはじめました
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