準備をしている間の心の中は、いつも甘酸っぱい
昼過ぎ、そろそろお届けに向け出発しなければなりません。
なにも知らずに保護部屋内で長丸、紅緒と大運動会を開催中だった安丸を腕に抱き、玄関のほうに連れて行きました。その際、普段なら私の姿を見つけると、きょうだいのだれよりも先に駆け寄ってくる安丸が、今日はチェストの下に身を隠したのです。
おいで。さあ、行こう!
キャリーにひとり入れられた安丸は、不安そうに鳴きました。
割と長い時間、鳴きつづけました。
真剣に私に訴えていたんだと思います。
「ぼくをひとりどこに連れて行くの?」
安丸……怖いんだね。
小さな頭で一生懸命考え、自分の未来を案じているんだね。
わかるよ。わかる。
エレベーターに乗り、駐車場で車を出し、助手席に荷物とキャリーを載せ……一連の動作を淡々と無言でこなす私の姿に、キャリー越しの安丸の不安鳴きはいっそう強くなっていくばかり。
安丸が鳴く鳴く鳴く
いや、鳴く、鳴く、泣く。
車を発進させた私は、運転の合間に話しはじめました。
相手は儚い子猫ですが、だからこそ、応えなければならない気がしたのです。
―――安丸、安くん、安くん、怖い?
ひとりはやだねぇ。
長丸と仲良しだったもんね。
さっきまで一緒に走り回っていたんだよね。
もっと遊びたかったんでしょう。ごめんね。
でも私を信じて、30分だけ、がまんしてくれない?
目を閉じて眠るといいよ。
安丸が運動会のつづきの夢を見ている間に
その間に
必ず安丸の孤独感を解決するから。
そしてその1時間後に、楽園に連れて行ってあげる。
絶対に連れて行ってあげる。
約束する―――
驚くことに私が一通り話し終わってから5分も経たぬうちに、助手席が静かになりました。
ふと隣に目をやるとプラスティック板越しに安丸の寝姿が……
さっきまであんなに泣いていた安丸が、お腹を出して寝ていたんです。
うそ……でしょ?
思わずひとり言をつぶやき、写真を撮りました。
キャリーの蓋が開いたことに気づいて、目を覚ましてしまったけど
すごい落ち着いた表情だと思いませんか?
少し笑っているような。
どこかおとなっぽく感じられるのは、ついこの前までキトンブルーだった安丸の両目が、成長に従いいつの間にか琥珀色に変色したからでしょうか?
安丸が寝落ちしてから約30分後、みいさんちに着きました。助手席に乗り込むみいさんに開口一番私がお願いしたのは、安丸をみいさんが持ってきたキャリーに入れること。
若丸(黒白)、みつ豆(黒)との合流です。
これで安丸との一つ目の約束は守りました。
同じ未来を生きる3匹がひとつの輿の中に入ったのです。
安堵感溢れた私は、腹ごしらえをしようとコンビニでおにぎりを買い、余裕で次の目的地へ
これから安丸はみいさんちにいた同腹のきょうだいたちと命の最後の日まで共存していくのです。
若丸(私たちは若さまと呼んでいます)
安丸に負けず、大きくなるんだよ!
みつ豆、いっぱい食べるんだよ
おてんばはほどほどにね!
きょうだい同士、仲良くね。
みいさんちを出てから約1時間後、終の棲家に着きました。
ここがあなたたちの本当のお家で私がさっき言っていた“楽園”です。
2つ目の約束も無事守れました。
安丸と若丸とみつ豆は新しいお家に着くなり、大はしゃぎで走りはじめました。さっきの不安鳴きが幻かのように(笑)。
よかったよかった!
私はときどき、保護動物たちの未来を決める重責に潰されそうになります。掘り下げて考えすぎて、前にも後ろにも右にも左にも行けなくなり、呼吸困難すら感じます。
すべては自分の決定次第。
彼らを楽園に導くのも、地獄へ突き落とすのも自分の決定次第。
命はこの上なく重いです。
でもだからこそ、良縁だと信じられるものに出会うと、体の底から生きる力が漲ってくるのです。私は自分ひとりの力で生きているのではなく、我が家に来てくれた保護犬猫たちとその里親さんたちに生かされているのですね。
どうもありがとう。
安丸、若さま、みつ豆の家族紹介は、次回につづきます。
お楽しみに!
※若さまとみつ豆の写真はみいさんのブログから拝借しました。
LOVE!
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