小ほほの写真に並んで小かつにも出会いました。2004年撮影
かつの里親募集に使った「アピールフォト」。14年以上前です。
地元のボランティアさんに保護されたとき、かつはまるでボロ雑巾でした。
里親探しを依頼された私が、かつを預かることにしたのです。
入院先の病院へかつを迎えに行った日、会社帰りの私はものすごく疲れていました。その私に院長先生がひと言。「残念ですが、その子は猫エイズです」と。
FIVキャリア(猫エイズ)という一語は、今より重い響き。現に先生も「残念ですが」と前置きしています。駆け出しの私は目の前が真っ暗になったような気がしたのです。簡単に引き受けなきゃよかった。バカなことをしてしまった。正直後悔しました。
けれど捨てちゃうわけにもいかないし、かつを連れて帰るしか選択肢はなかったんです。
私はあの手この手でかつの赤い糸を探しました。
かつは人見知りの激しい気の強い子猫で、ベタベタ甘えたりしません。
ケージから出すとすぐに隠れてしまいます。愛想も悪い。
だけどべべやナナのことははじめから信頼していたのです。
そのうちにFIVキャリアのかつにもネットを通じて声が掛かり、かつは我が家を巣立っていきました。婿入り先はフルタイム勤務でヒーヒー喘ぐ私からしたらたいへん裕福なお宅。やさしそうな里親さんの人柄に、私はほっとしたものです。
しかし譲渡から3日目、かつがいなくなったとの知らせが来ました。
心臓が止まるかと思いました。ナナの散歩を済ませたあと、車で2時間かかる里親さん宅へ飛んでいった私。城のように広い建物の外と中を汗だくで捜索。
「かっちゃん、かっちゃん」
かつの名前を呼んでいたら、不意に涙が出て止まりませんでした。
里親さんはいい方だったのですが、温度差が私とはあまりにも開いています。家族で日常会話を交わしたり、カレーライスを笑いながら食べたり。果てには家族内で次に迎える猫を動物病院へ見に行く約束まではじめたのです。
若かった私は悔しさを抑えることができませんでした。
かつが生きていても死んでいても私が連れて帰ろうと胸に誓って探しつづけたのです。かつの居場所がその家の中に見つけられなかったから。
次の日、かつは無事に私の手元に帰ってきました。
私にべったりくっついて眠るかつを眺めながら、私は決めたんです。独身ゆえかつに多少ひもじい思いをさせるけど、かつをもうどこにもやらないと。私にとってそれは大きな決断でした。すでにべべとナナがいたもんですから。
お客さんの間で「幽霊」と呼ばれていたかつくん。でも私相手だとトイレの中まで入ってきます。自分にだけ懐くのはなんとも言えない愛おしさですね。
703号室に泊りに来た卒業犬「コラくん」とかつ♡ 仲よしです。(2006年)
1歳、2歳、3歳
順調に加齢していたかつを突然FIPが襲いました。FIPの診断がつくまで、私はかつにできる限りのすべてをやりました。確定的になったあとも、かつの生きる道を模索しつづけました。当時知り合ったemi-goは私の印象をこう話しています。
「田辺さんはいつも泣いてる人だなと思ってました」
FIPウエットのかつのお腹はみるみる膨らんでいきました。腹水が溜まっていくのです。抜いたり抜かなかったり、臨機応変に対応していたのですが、ついに恐れていた胸水も溜まり、最期はいちばん怖かった「肺水腫」になりました。
そして2タイプある肺水腫の中でもひどい方のくじを引いてしまったのです。
胸全体に胸水が溜まるのではなく、肺の細胞のひとつひとつに水が溜まっていく方。終盤、かつはほんとうに苦しそうで、私の脳裏にチラチラ「安楽死」がよぎったほどです。
どんなに手を尽くしても叶わないことがあると知りました。そしてずいぶん自分を責めました。
FIPは未解明の部分が多い病気ゆえ、「ストレスで発症するのではないか」と言われていたのです。自分がかつにストレスを与えていたのではないか、かつが亡くなったあとも10年以上そればかりを考えています。
11年前の酸素室。アナログですが、この時代に酸素室はめずらしいでしょ?
周りで使っている方はいませんでした。
かつの影響で私は今もFIPという病魔に心を蝕まれています。
保護猫たちが発熱したり食欲が減るたびに、FIPに対する畏怖が蘇ってくるのです。この病名を書くことすら抵抗をおぼえます。たぶん一生克服できないです。
かつへの強い未練を持ちつづけている証拠かもしれませんね。
たった3年しかいっしょにいられなかったけれど、かつは紛れもなく私の息子でした。
重い病と闘ったかつのがんばりを私は死ぬまで忘れません。
亡くなる少し前のツーショット。痩せちゃったけど色男でしょう?
かつくんはべべとナナと同じ場所にいるかな?
かっちゃん、愛しているよ。
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