あまりの強風で洗濯物がどこかへ飛んでいきました(泣)。友人に結婚祝いでもらった高価なバス タオルも飛びました。探したけれど、見つかりません。そのタオルは、客用だったのにも関わらず、チチが使ってしまったので、仕方なく洗ったものです。早く 出稼ぎから帰って来い! 日頃の不満と一緒に清算してやる! そしてご心配頂いている私の腰痛ですが、情けないことに悪化しています(涙)。
不妊手術と合わせて、フィラリア検査(-)、フィラリア投薬、9種ワクチンを施しました。衛生面を考えて、長めに入院させて、それから土手へ戻しました。戻すとき、Iさんが飼い主に「ACOを誰かにあげる気はないの?」と聞くと「ない」と返って来ました。
土手の犬は、何もしなければ1年~3年で死んでしまいます。寒さ、偏った栄養、そしてパルボなどの病気。一番怖いのはフィラリアです。彼らは年中、蚊の攻 撃に遭い、重度のフィラリアに罹ってしまう。703の姫様、ナナもひどいフィラリアでした。私は、彼らの保護、または、彼らの寿命を伸ばすことを目標にし ています。土手で生きるのは過酷でしょう。けれど少しでも状況を改善し、少しでも長く生きてもらいたい。「土手で生きているんだから、早死にしても、それ があなた達の運命ね」とは思いません。犬の運命は私の手に委ねられている。一人の主婦がそれを変えられると証明したいのです。
若すぎるACOに土手で15年生きられると、ちょっと困る(笑)。だから絶対に土手から出さなくては。
手放す気がない。盗むのは危険。ならどうすれば良いのか……。そこで、人間観察に徹しました。飼い主のホームレスとは初対面状態でしたので、まずはその性 格をよく観察してみることに。どんなものが好きか。どんな弱点があるのか。小屋を留守にする時間帯は? 就寝時間は? そして、仲間からどう思われてる か? 仲間が多い? など、とにかくちょくちょく通って観察しました。
好きなのはお酒。働いてないので、年中小屋に居る、ACOと一緒に。情に厚く、涙もろい一面がある。信頼できる仲間は少ない。犬の世話を好んでするが、生 活力は低い。深い眠りにつくのは夜中の12時以降。目が覚めるのは朝の4時頃。そして、彼も又日本のホームレスらしく物を乞わずプライドが高い。
頭の中で、整理します。盗る場合の時間帯、盗った後の行動。
盗らない場合、どんな風に話を持ちかけるべきか……。プライドを傷つけて怒らせてはいけません。「こんな場所に居てもACOは幸せではない」そう言っては いけません。何度も通い何度も考えた私は、ついにメロディの卒業を機に行動に移すことに決めました。Kさんに作戦を伝えると、「読めないわね。うまくいく かしら? でも、いずれにせよ、私も一緒に行くわ」と言ってくれました。
いつもはドックフードを大量に持って行きます。でも、ACOを連れて帰るつもりなので、フードを無駄にしてはいけないと、ドックフードの代わりに焼酎を3 本。小屋に着くと、飼い主の男性は珍しく外出中でした。ACOがウレしょんでお出迎え。今なら作戦を変更して、盗れるかも? と思いましたが、盗るのはや はりやめました。小屋を覗くと、中にはぺディグリーチャム(犬のフードのメーカー名)の缶や、ドライの袋が幾つもありました。私が渡したものではありませ ん。彼が自分で買った物です。彼らにとってぺディグリーチャムは高価なはず。それを買って与えている……。
Kさんと目が合いました。
「今日、うまくいかないかもしれないですね」
「そうね。」
小屋の周りを少し掃除していると、飼い主が戻ってきました。目を見つめて切り出します。心臓がドキドキして息苦しかったです。
「聞いて欲しい事があるの。……実は、私には叔母が居て、その叔母が数年前に息子さんを事故で亡くしたの。それきり元気がなくなって、この前会った時、励 まそうと思っていろんな犬の写真を見せたの。そしたら、自分が若いときに飼っていた犬にそっくりだからACOを飼いたいと言われたの。“この子はダメよ。 今大切にされているんだから。他の子にしましょうよ”と言ったけれど、他の子ではなく、前の犬似のACOがいいと泣いてしまって……。だからダメモトで頼 みに来たの。ACO、ダメ? 勿論、叔母は礼に厚い人だからきちんとお礼はするわ。要らないとおっしゃるでしょうけど。」
飼い主の曇った顔。そして沈黙。
「……いいよ。今持っていくかい? 今、持って行ってもいいけど、一つだけ約束してくれよ」
「何?」
「いい犬だから、大切に飼ってくれよ。オバサンにそう伝えて」
もう、嬉しいのと切ないので涙が止まりませんでした。
「はい。必ず伝える。大切に飼うように必ず伝えるね」
そして、ポケットから「お礼 ○○」と書いた袋を出し、手渡しました。○○は、架空の 叔母の名前です。Kさんと思いつきで決めました。中身はお金です。一人で出すつもりでしたが、Kさんがどうしても半分出すと言ってくれて折半になりまし た。少し時間を置いて、飼い主とACOを二人きりにさせました。飼い主は、うなぎと中トロをACOに食べさせていました。最後のご褒美のつもりでしょう。
「最後にもう一度、抱っこします?」
Kさんが話しかけると、飼い主は大粒の涙をこぼして、首を横に振りました。
「もういいよ。もう十分」
ACOが我が家にやってきた経緯の全てです。
小さい時、嘘をついてはいけないと教わりました。けれど私は、嘘をつきました。私には、ACOを欲しがる叔母など居ません。他の選択肢がどうしても思いつ かなかっただけです。私は、残酷なことをしました。でも、後悔などしていられません。ACOを幸せにします。そう約束したし、それが私のやるべきことだと 思うからです。
ペットシッター「にくきゅうのおせわ屋」をはじめました
お留守番をがんばるかわいい家族が「お帰り!」と目を輝かせて出迎えてくれるよう、安心・安全に最優先で心を込めてお世話します。
足立区・荒川区・文京区を中心に活動してますが地域のご相談やお世話内容など、
⇒足立区のペットシッター にくきゅうのおせわ屋をご覧ください!