やあ、ベレーボ。
あの出会いは、日常のちょっとした奇跡だったね。
今だから告白するけれど、私はその瞬間からベレーボが好きだったよ。
お前の小さな体を力いっぱい抱きしめたい衝動に駆られた。
ベレーボ!
ベレーボ!
ベレーボ!
一日に何度もお前の名を呼んだよね。
呼べば呼ぶほど、ベレーボと仲良くなれる気がしたの。
べべのことも、ナナのことも、あまたのこともベレーボと呼び間違えた。
警戒心ゼロの無垢な瞳。
短く繰り返す独特のなきごえ。
やわらかい毛ざわり。
楽しいことやおいしいものを探し求め、狭い部屋の中を右往左往。
旅の途中で目が合うと、必ず私の体にすり寄って挨拶をくれた。
「ねえ、“好奇心”って知ってる? ぼくの中は、それであふれかえってるんだよ」
「あらそ。で、ウロウロしちゃって、なにしたいの?」
「おいしいものはない? おもちゃはどこ?」
「さっきご飯をあげたばかりだし、おもちゃは自分で壊しちゃったでしょ?」
「そうだっけ?」
「いいこと教えてあげようか?」
「なになに?」
「そういえば、ベッドの下にペットボトルの蓋が転がってる気がするけど?」
「ベッドの下? ありがと。ぼく、ちょっともぐってみるよ」
ふたをくわえて戻ってきたベレーボは、顔中にほこりをくっつけて得意満面に私を見つめた。
「あったよ!」
ああ、ベレーボ。
どうして私の心を乱すの?
中年男性のような寝顔も印象的だったね。
私の枕を奪って、私を敷布団から排除したくせに、結局は淋しくなって、自分も布団を出て床の上に転がったよね。
硬いフローリングは、だけど不思議と居心地が良かった。
お前と一緒だったから……。
ベレーボ、お前を連れ帰る少し前から、私、機敏さを失っていたの。
心の中を整理整頓できなくなってきて、前よりずっと、決着をつけるのが下手になったの。
お前は気がついていたかい?
私の本当の姿に。
自分がどれほど強欲で未練たらしい生き物か、考えただけで苦笑が漏れる。
実は私、“お別れ”が苦手なの。
今までいた者が急に別の場所に移動して、それを決めたのは他でもない、私自身なのに、ギューと苦しくなって、だから私、誰かが出て行くと、すぐに部屋の掃除をはじめるの。
幸せになってくれたんだからそれでいい。
はじめからいなかったと思えばいい。
痕跡を消す作業が捗れば捗るほど、抜けおちた毛束や壁に刻まれた爪痕や思わぬ場所での粗相を発見してしまう。
つぎの瞬間、思い出が走馬燈のように駆け巡って手が止まる。
そして、怒る対象を失ったことにはっきりと気がつく。
ベレーボ、お前は何を残して去るの?
考えただけでたまらない。
どこにも行ってほしくない。
ベレーボ、私ずっと考えていたんだよ。ベレーボとこのまま一緒に暮らせないか、ずっとね。この前たった一泊長野に行っただけなのに、会いたくて胸がつぶれそうだったから。
悶々とする日々を送って、葛藤を繰り返し、やっと答えに辿り着いた。
頭数が限界を超えている我が家では、お前に時間をかけられない。
新たな猫との出会いもあると思う。
未来の猫にも、私はお前にしたのと同じことをしたい。
その時、お前を手元に残したことを微塵にも後悔したら、可愛いお前に申し訳ない。
だからいいさよならをしよう。
さあ、ベレーボ。
行っておいで。
六本の手が、お前を待ってるよ。
保護猫ベレーボは昨夜より新たな生活をスタートさせています。
数え切れないほど沢山の家族希望を頂き、感無量です。
今回は、正直きつかった~。
いや~、きつかったです(笑)。
皆さまにも途中経過を! と思っていましたが、どうしても気持ちの整理がつかず、卒業後の報告となりました。お許しください。
問い合わせがくればくるほど、本来は嬉しいはずなのに、実際嬉しいのに、反面、気持ちがソワソワしました。ベレーボマジックにハマりましたね。ベレーボ、おみごと! 100回以上繰り返している猫のお届け。どの子の時も辛かったけれど、泣いたのは二度目です。
ちなみに、私が泣いた一度目の猫はかつくんでした。かつくんは出戻ってきた後、わが子として生涯を閉じましたが、ベレーボは出戻りません。きっちりしているご家族ですから。
ベレーボの新しいご家族の紹介は次回。
シクシク。
嬉しさと淋しさでいっぱいです。
そう言えば、ベレーボはいろんな顔を見せてくれたけど、怒った顔だけは見たことないな……。
「いや~」 「ほれほれ、チコウヨレ」
「いや~」 「チューさせて」
かつくん「長くなってごめんね。ベレーボ、とてつもないキャラだったね。なんだろ。小さいのにこの存在感は……。ハハの最近の強敵は“別れの辛さ”だって。贅沢なこと言ってるよね。ベレーボの家族紹介は次回たっぷりと。楽しみにしててね~♪
ハハの本、それでも人を愛する犬をよろしく!
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