ピストル音


事態が大きく動いたのは、それから数日後のことだった。
その日、シェルターで手伝いをしていた女の友人から女の携帯に電話がかかってきたのだ。諦めきれない女は、定期的にシェルターへ通う友人に、再度ララちゃんの体長を測るよう頼んでいた。電話口に出た女は、弾む友人の声を聞いてその件だと直感した。

「ララちゃんの体長の件だけど、今、もう一度測ってみたの」

「そう! ありがとう。で?」

「ララちゃん、46cm!!」

「えー? マジ? 50cm未満ってこと?!」

「うん。間違いない。ちゃんと測ったから」

「ねえ、今すぐ幸多の里親さんに電話をかけてみるから、ちょっと待っていてくれる? あとで折り返してもいいかな?」

「分かった」

女は電話を切るなり、夫妻の番号を押した。指はブルブルと小刻みに震え、喉はカラカラに渇いていた。

「もしもし、私です。シェルターのララちゃんの件でお電話しました」

「あ……はい」

「ララちゃんですが、今、再度体長を測ったら46cmだったそうです!」

「え」

「ララちゃん、“50cmの壁”をクリアしたのですが……」

「はあ。ララちゃんのことはもう、諦めていました。……でも、ああ! そうですか。ララちゃん、46cmでしたか。……大至急かみさんともう一度家族会議を開きます。少しお時間を頂けませんか?」

「ええ。もちろん。では後ほど」

電話を切った後も尚、女の興奮状態は続いた。ご主人の声の調子からして、もう結果が分かっていたからだ。ララはシェルターを出て夫妻に迎えられる。パートナーとして……。

一時間後、女の携帯電話が歓喜の着信音をあげた。女は冷静を装って電話に出た。

「もしもし、遅くなってすみません。今、家族会議が終わりました」

「お疲れさまでした。で、どういった流れになっちゃってますか?」

「ええ。一度は諦めたので正直とても驚いています。結果から申し上げますと、ララちゃんをぜひ我が家でお迎えしたいのですが、いかがでしょうか?」

「嬉しい!! シェルターのスタッフの方々もきっと喜んでくださると思います」

「ただ、こちらの仕事の都合で申し訳ないのですが、夫婦揃っての休みがなかなか取れません。その為、シェルターへお迎えに行くのが先になりそうですが……」

「保護犬は幸多の時と同じようにこちらからお届けします。シェルターの子たちも皆同じ形を取っていると思います。新しい子を迎え入れる準備も必要でしょ う。よろしければ少しの間、我が家で預かりましょうか? シェルターへは今友人が行っています。その友人の車に乗せて連れて帰ってもらえれば、私が引き 取って預かっておきますが」

「お手数でなければ、助かります」

「ぜひ一度、お仕事帰りにでもララちゃんに会いに我が家へ遊びに来てください」

「ええ。そのつもりです。仕事の合間を縫って、ララちゃんを迎える準備をすすめておきますので、それまでの間、預かってもらえますか?」

「もっちろん!!」

次の夜、女とその夫は友人宅へララを迎えに行った。

数か月前、センターへ送られたララは、運良く殺処分を免れてシェルターに入った。はじめて会う“シェルターのララちゃん”は、幸多より遥かに小さく、シャ イな女の子だった。こちらを見上げる眼差しはどことなく幸多に似ている。しかし、実物のララは幸多とさほどそっくりではない。“酷似”や“瓜二つ”といっ た表現ではないのだ。けれど、そんなことはもうどうでも良かった。確かに夫妻は幸多に似たララの写真に目を留めた。が、それは一つのきっかけにすぎない、 と女は考えた。夫妻は走り出すためのピストル音を求めていただけなのだ。

“位置に着いて! ヨーイ! バーン!”

~~~~~

若く健康的に見えるララには一つだけ問題があった。
血液検査の結果、フィラリア“強陽性”。
女は、ララの姿に目を細める夫妻にその疾患を説明し、横に並んで返答を待った。

「全然。この子が病気なのは不憫ですが、そんなこと、私たちは全く気にしません。フィラリアについて、もっと勉強を重ね、この子に適した治療を受けさせます」

奥さんは毅然とこう述べた後、そんなことよりも、実はララの名づけをめぐって夫妻間に歩み寄りがたい対立感情が芽生えていることを明かした。そして、対立 しているのは名前だけではなく、食事管理の問題(ご主人はおやつアゲアゲ派、奥さんは慎重派)、首輪の種類、迷子札のデザインにまで及んでいることをもら した。

夫妻の主張を交互に聞いたお調子女は、どちらにもひたすらいい顔を繰り返し、両方の味方になってみたりした。それを見抜いた女の夫は、二人が帰った後、強い口調で女に言い放った。

「なにあれ? ってか、お前にはうんざり」

先代幸多
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もめにもめた結果、ララちゃんは“らん”に落ち着いた。
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天真爛漫に生きて欲しい、そう願ってつけられた名前。
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『らんちゃん、良かったね。家族っていいよー♪』

らんに祝福のコメントを送る女の傍らには、三頭の犬と二匹の猫が寄り添っている。

かつくん「らんちゃんの引き渡しはぼくの命日に行われました。幸多のパパさんがぼくのお骨に手を合わせてくれたよ。ぼく、嬉しかったな。ハハもぼく同様、嬉しそうだった。いい一日だった。

Ⅹ133らんちゃん、おめでとう。ご家族から送られて来たらんちゃんのきゃわゆい写真は次回のお楽しみにします。トリミング後のらんちゃんは生きる天使のように可愛いよ。家族写真もあるし! 皆さま楽しみに待っていてね~♪

幸ちゃんが縁でまた素晴らしい出会いを果たすことができました。幸ちゃんやシェルターの皆さまに感謝します。ありがとう!

ハハは今日、泥酔してます。更新するのもやっとだったみたい。衆院選に立候補する友人らと渋谷で飲んだんだって。選挙、頑張れ~♪ そして日本を変えてくれー!

ハハの本、それでも人を愛する犬をよろしく!

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かつくん なな

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