愛を纏う犬2


~四人目の飼い主 後~

一見爽やかな風景に遭遇することもありました。

違う犬のテントを目指して歩いていると、タロウとホームレス夫婦が散歩している姿が目に飛び込んできて、それは不幸と緊張が続く土手の中で、束の間の小さな希望のような瞬間でした。

「こんにちは。タロウとお散歩ですか?」

「ああ、たまにはこうして歩いてやらないとな。運動不足じゃ可哀想だから。」

「良かったね、タロウ。いっぱい運動して逞しくならないとね!」そう話しかけると、タロウは心底嬉しそうな顔をして、私の手に優しくキスしてくれました。

そんな日の夜は、安定剤を飲まなくても落ち着いて眠れます。タロウの嬉しそうな顔を思い出し、深い眠りに吸い込まれていく心地良さは、ちょっとした媚薬のようなものでした。

でも、そんな日は長くは続きません。それが土手犬タロウに課せられた運命だったのかも。四人目の飼い主も又、タロウを置いて去って行きました。

~五人目の飼い主~

四人目の飼い主のテントを訪ねると、中から見知らぬホームレスの男が出て来ました。

番犬として吠えるはずのタロウは吠えず、明らかに動揺している素振りで、紐が伸びて自由が利く2m程の範囲を行ったり来たりしていました。

「こんにちは。タロウに薬を与えに来ました。ここに居たタロウの飼い主のご夫婦は?」
と話しかけてみると

「もういねぇよ。生活保護の申請が通ったって。ここを出て、アパートに越して行った。このテントと犬は俺が貰った。」

「そうですか…。」必要以上に関わらないように気を付けているので、私がそれ以上のことを聞く事はありませんでしたが、素朴なタロウの佇まいが、とても惨 めに思えてなりませんでした。そして、神様がいるとしたら、一体何の為にこの犬に要らぬ試練ばかり課しているのか、聞いてみたい気持ちになりました。うま く言えませんが、この犬のこの状況を作り出した全てのものに、漫然と怒りのような感情を抱き、自分の微力さに辟易しました。

土手通いが、だんだん耐えられなくなってきました。自分を制することにも、結果が出ると信じながら演じてきた「温和な女の役」にも、もう耐えられなくなってきました。

タロウ、また飼い主が変わってしまったね。
前、タロウに頑張ってほしいと言ったけど、あれは取り消すことにした。
もうどう頑張っても、お前の力ではどうにもならないから、だからもう、
どうかもう、頑張らないでほしい。
もう打ち解けよう、愛されようと努力しないでほしい。
見ていられないよ。

心の中で、そんな風に話しかけてみたけれど、現実の中でもがきながら生きる目の前のタロウは、新しい飼い主へのご機嫌取りで忙しく、諦める私の思いは、届きませんでした。

その頃のタロウ。


自分が味わってきた苦難や淋しさを、ろ過しつくした澄んだ瞳。


申し訳なさそうに甘える顔


不衛生極まりない食事環境。


小ハエが集ってました。でも、この日はまだマシな方。

 

それから数ヶ月後。

五番目の飼い主は、タロウを土手に置いたまま、幽霊のように姿を消しました。

繋がれっぱなしでの状態で数日間放置され、水さえ飲めなかったタロウを偶然発見した知り合いのホームレスから連絡を貰って土手へ急ぐと、日陰に繋がれたタ ロウは相変わらずの笑顔で私を出迎えてくれました。タロウを保護してくれたホームレスの話によると、一時はぐったりとしてあまり動かなかったとか。涼しい 場所へ移動させ、水を少しずつ与え、頑張れと励ますと、タロウは首を起こし尻尾をパタつかせ、次第に呼吸を整えたそう。

それを聞いて、この犬はまさしく危機一髪の状況で救われたと感じました。
そして、だから今こそが、この犬を保護する時なのだと分かりました。

タロウ、土手から出て、本当の居場所を探そうね。
タロウは愛されなかったけれど、愛を知らない訳ではない。
タロウ自身が、愛を纏い、人を幸せしようと、努力を重ねる犬だもの。
幸せになれるよ。絶対になれる。

7月の半ばに保護し、今はお心ある方のお宅で一時預かりしてもらっています。

一時預かりのお宅には、生き場を失った犬猫が多数居るため、タロウを飼うことは出来ません。タロウがあまりに素敵な犬だから、何とかして飼うことをご家族 で検討してくれたようですが、頭数が多く、これからも増えることが予想される為、預かりという形で関わってくださっています。

土手から出たタロウ、室内犬としていたずらもなし、先住犬達とも仲良しで、ご飯もモリモリ食べて、パーフェクトにいい子だそうですが、若干、ビビリなとこ ろもあるようで(笑)。私自身、ビビリ犬が大好きなので、そういうタロウが可愛くて仕方ないです。叔母犬、ナナちゃんタイプかな?凶暴さが全く備わってな いうちのナナってところでしょうか?

とにかく見てください。

この可愛すぎる顔を!!(先日会いに行った時に撮ったもの)


ねえ、タロウ、お前は憎いくらいいい子だよ。

タロウ、苦労が続いたけれどまだ4歳!
去勢・ワクチンなどの医療ケアも既に済ませています。

本当の家族を大募集します!!

どうかどうか、タロウの可愛い姿が、お心ある方の目に留まりますように。

「一人でも多くの方がタロウを知って、好きになって、その中からタロウと一緒に暮らしてみたい、タロウに愛を注いで、タロウから愛を注がれてみたい、と思 う方が現われてくれたらこんなに嬉しいことはありません。タロウのご家族を募集しています。気になる方はぜひお問い合わせください。

703号室の同窓会、参加予定犬が2頭増えました。近日中に写真と共に詳細をUPする予定ですのでお楽しみに~

703号室はランキングに参加しているので、ぼくとナナちゃんのの写真をクリックして応援してね。沢山の人に読んで欲しいから。かつくんより」

かつくん なな

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