真夜中の興奮状態


今日は眠れそうにありません。

のりまきが鳴いたのです。

はじめて鳴き声を聞きました。

「んにゃん」

か細い声でしたが、確かに鳴いたのです。

ねえ、のりくん、なんて言ったの?
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ごはんをくれていた若夫婦に「二等兵」と呼ばれていたのりまき。

二等兵……この名には理由があります。

当時の野良ボス猫は我が家で保護し闘病の末に亡くなった「まーも」でした。まーもの影に隠れるようにコソコソ動き回っていたから、のりまきは「二等兵」だったのです。

ごはんをくれていた若夫婦は、小さな子供を連れだいぶ前に引っ越してしまいました。毎日その夫婦の家の前で骨休みをしていたのりまきは、突如行く場所を失ってしまったのです。

うちのすぐ近所だったので、私は事情をよく知っています。

夫婦の古巣に灯りがともらなくなったあとも、のりまきはちょっとすれた忠犬のようによくそこにぽつんと佇んでいました。毎日通ううちに、心の拠りどころになっていたんだと思います。家に灯りがともるのを、夫婦の声を、影を、ぬくもりを、探し、待っていたんです。

その姿がとても切なくて、私は保護を急ぐつもりでした。

でも、あの時期はなぜかどういう手を使っても保護できなかったです。

引っ越す前、若夫婦は一度も「二等兵」にさわったことがないと話していましたが、それでも、のりまきにとっては大切な人だったのかもしれません。

ただあまりにも無口だから、それじゃのりくん誰にも伝わらないよ……。

保護する前は、なかなか捕まらないのりまきに「保護してやれなくてごめんね」を言い、保護したあとは、「保護しちゃってごめんね」を言いつづけました。

どうしてやればいいのか、わからなくて。

外にいても我が家にいても、のりまきが幸せそうに見えなかったから。

必死に生きているのに、生き延びてきたのに、生きている姿が幸せに思えないなんて、おかしい話です。

でも、さっき、鳴いたの。

あの子がはじめて自己主張したのです。

私は完全に涙腺が壊れてしまい、嗚咽を漏らしました。

のりくん、なんて言ったの?

いいこと?

いやなこと?

文句?

なにを伝えたかったの?

お座りしたのりまきを撫でていたら、この子の過去が全部すっと私の中に入ってきました。鳴けるのに鳴かなかったのは、自分の声がどこにも届くはずなどないと諦めていたからでしょう。

じゃあどうして鳴いたののりくん……

私も涙が止まらないよ。

のりがどうして鳴いているのか、私にはわからないけれど

私がどうして泣いているのか、のりにはわかる?

のりが勇気を出して開いてくれるなら、中からどんなものが出てきても絶対に受け止め守ってあげる。信じてくれなくても、約束する。

お前さんはもう、二等兵じゃないんだよ。

私は彼に肩の荷物をおろしてほしいと願ってきたけれど、実は彼が一番、窮屈な生き方に辟易していたのかもしれないですね。

強い。

小さくても、私なんか、まだまだかなわないや。

のりまきあなた、本物の男だね。

なに言ったのかは不明だけど、声が聞けて幸せで、とりあえず愛してます。ありがとう。

きっと近いうちにもっともっと仲良くなれそうな気がするよ。

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