一番の涙


起きたのはお昼近くでした。

処方されている精神安定剤の効き目がひどく、一旦眠ってしまうと何処までも起きれません。かつの闘病の時は、1日に4時間眠れれば大満足でしたが、ここへ来て私は真夏の冬眠を余儀なくされています。

午後5時から精神科のカウンセリング。優しそうな女医先生が担当してくれました。

生い立ちからかいつまんで三十数年の主婦の歴史をアレコレ聞かれ、かつの死についての自分の気持ちや症状を伝えると、薬を増やされてしまいました(笑)。
安定剤の他に、抗うつ剤も処方されました。

「パキシル」という名の薬で、副作用に吐き気が伴うため、吐き気止めとセットで処方されました。薬は飲みたくありません。例え、今だけは必要だとしても。そう告げても、尚飲むように勧められ、2週間分処方されて、次の予約を入れられてしまいました。

「適応障害」の他に病名が2つ。詳しい病名は伏せますが、必ず近いうちに復帰します。かつのためにではなく、自分のために。

帰り道、まだ明るかったので自宅へ帰る気にはなれず、迷った挙句、車でユキちゃん(保護活動友達)の家に向かいました。アポなし。居てくれなかったら、ユ キちゃんの犬猫たちの顔を見て帰ろう、そう思って。。。かつの死の間際、ユキちゃんにはとてもお世話になったので、手土産もなしですが、一言お礼もしなく ては・・・。

ユキちゃんのお宅は犬猫が更に増え、大型犬4頭、中型2頭、猫4頭、計10頭の大所帯になっていました。どの子もひどい生い立ちで、一番甘えん坊のゴー ルデンのアンは、覚せい剤中毒で、足が1本折られて永遠にまともに走ったり座ったり出来ない体です。覚せい剤を打ったのは、勿論犬のアン自身ではなく 「元飼い主」という鬼の仕業です。
10頭のうち、障害を持ったり、病気を抱えたりしない子は数頭しかおらず、ユキちゃんのお家はまるで彼らの「防空壕」です。

ユキちゃんは、妹のみなちゃんと犬の散歩で留守でした。
代わりに、ユキちゃんのママが私を招き入れ、お茶を出してくれました。
3頭だったはずの猫が4頭に増えていたので、訳を聞くと、捨てられて放っておけず連れて帰ってきたとか。生後4ヶ月位の可愛い三毛猫で「ココ」と名付けられていました。ココは快活でしたが、特別私に擦り寄ることもせず、近くで遊んだり休んだりしていました。

ユキちゃん、妹のみなちゃん、6頭の犬達、4頭の猫、ユキちゃんのお友達2人、ユキちゃんのママ、ユキちゃんの娘のみらいちゃんがリビングに揃い、私 はかつの時の礼を述べて、犬や猫たちと遊び、猫がご飯を食べる可愛い姿にうっとりしながら、昔かつもこんな風にご飯を食べていたっけなと回想に耽って何と なくお茶をすすりました。

朝から何も食べていなかったので水分がたまり、おトイレを借りて戻ると、妹のみなちゃんが「信じないわ。やめよう。」ママに向かって言いました。そうね、そうね、とママ。

何となく話が私に関係するようだったので「ん?どした?」と聞いて、元の位置に腰掛けると、ユキちゃんが私を真っ直ぐ見つめて「信じないと思うけど、信じなくていいの。」と前置きをしました。

「あなたのかつくん、そこに居るじゃない!!!
あなたの膝の上に居るじゃない!!!
あなたを見ているじゃない!!!」

とママに言われました。
私は、霊も信じなければ、神さえ疑う人間で、占いも全く興味が無い可愛げの無い女です。でも涙を流したママの表情はとても清らかで、私は自分の膝に目を落とし、信じずにはいられないと悟りました。

ママが「ココ、体をかつくんに貸してあげて。すぐに傍に行ってあげて。」と保護したばかりの子猫に告げると、ココは初対面の私に向かって突き進んできて、膝に乗り、私を真っ直ぐ見つめました。みんなが息を呑んで私とココに視線を向けました。

あまりに信じられない状況で、頭がパニックして、私は泣いて泣いて、ココの体を濡らしてしまったけど、ココは何処へも逃げようとはせず、黙って私に抱かれ、いつまでもそのままの状態が続きました。

「痛い思いをさせてごめんね。
苦しい思いをさせてごめんね。
ごめんね。ごめんね。ごめんね。」
そう、ココに言ったのか、それともかつに言ったのか、自分でも分かりませんでしたが、とても素敵な時間を味わうことが出来ました。

今まで流したどの涙とも違う。
一番の涙を流すことが出来ました。

勿論、楽になりきったわけではありません。
かつを忘れることも出来ない。
明日も、会いたくて、胸の苦しみに負けてしまう時間を過ごすでしょう。
だから何もかもが変わったとは言えません。

信じる方を否定しませんが、それでも私は霊や超能力を信じない。

けれどあの瞬間、私が抱いたのは、ココではなくかつでした。

ユキちゃんのお宅から帰る車内で、何度も何度も膝を撫で、私は自分が生きている心地でいっぱいでした。

そして家路に着いて、チチと合流し、ベベナナリルを連れて夜遊びへ向かいました。
公園を散策し、ドックランで放し、ドックカフェへ寄って3頭にご馳走を振舞いました。

走れないと言われた保護子猫のほほも、今では家中飛び回り、トイレも覚え、リルとの相性はいまいちですが、短命なんて言わせないとばかりにイキイキしはじめました。

この星は、こういう星なんですね。
又新たな発見をしてしまいました。

「この星はどんな星?」

「・・・・・・・・・・・・・。」

「いい星。」

「ぼくは今まんまる星で暮らしています。まんまる星は703号室にある小さな星。今日もぽちっと応援してね。そしてぼくがハハのお膝に乗ったこと、信じてください。」
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