※ブログをまとめて更新しています。お時間のある方は遡ってお読みください。
先日、うちが約20年お世話になった大巻先生の病院が、閉院すると知り、本当に狼狽しました。
そして、途方に暮れています。
さぶが最後まで通っていたのも、大巻先生の病院です。
昔から、大巻先生の「病名の当て勘」は、神がかっていて、私は大ファンでした。
もちろん、その「勘」は、論理的な思考と、大巻先生の知識と経験値に基づいています。
大巻先生の病院には、大きな設備がないので、東京大学などの大学病院や、専門的な病院など、ほかの病院のお世話になることも多かったのですが……なんというか、「安心」や「要」なのです。
正しく病名(病気の正体)を把握すれば、対策が立てられる。
いち早く適切な治療を受けられる。私は、そう考えています。
麻酔すらも躊躇するような超老齢のお子たちや、治療の見込みがたたない重病なお子たちは、痛みを和らげる、苦しみを緩和するなどの「対症療法」を選択することもありますが、それ以外の場合だと、私は「原因療法」を支持しているのです。原因を究明して、積極的に治してあげたい。
まあ、むろん、ケースバイケースですけどね。
だから私にとって、病気の「原因」を正しく突き止める獣医師は、最高の獣医師です。
たとえば、人間の私が胃がんになったとします。
胃がんで起こる、胃の不快感や、痛みを和らげてくれるお薬や治療をメインにするのは、対症療法ですよね? 胃薬、食欲増進剤、鎮痛剤、制吐剤などを処方されるかもしれません。
対して、オペが可能なうちであれば、積極的にオペをして、がんを根本的に取り除くアプローチをするのが、原因療法かな? と私は解釈しています。あっていますか?
(手術で根治が目指せるステージだと仮定して)皆さまは、ご自身が胃がんになったら、手術を希望しますか? それとも、その場の痛みや苦しみに効くお薬で様子を見ますか?
私は、自分が胃がんなら、リスクは承知の上で、手術に賭けてみたいです。
自分が胃がんだと手術を希望するのに、自分の犬猫たちが胃がんになったら、「手術はかわいそう」や「お金がかかりそう」や「それも運命、それも寿命」や「入院させるのは不憫」や「人間と犬猫はちがう」などといった理由で、対症療法を選択する、という飼い主さんもいらっしゃいます。
あるいは、自分が胃がんになっても、自分の犬猫たちが胃がんになっても、はじめから手術を希望しない「自然療法派」や「対症療法派」の方もいらっしゃいます。
自分は手術を受けないけど、犬猫たちには受けさせたい方、も、いるかな?
私なら、自分が胃がんになっても手術を希望するし、自分の犬猫たちも、(よく検討、吟味をしたうえで、いける可能性が高いと判断したら)手術を受けさせます。
なにが正しくて、なにがまちがっている、という正誤論をここに書きたいわけではありません。
ほかの方が出した答えをジャッジメントする権利は、私にはないのです。
ただ、病気に対する考え方、アプローチの仕方が、大巻先生と私は似ていると感じていました。
だから、大巻先生の病院が閉院するのが惜しいです。
ちなみに、私がもっとも愛した「べべ」という犬は、まさに胃がんでした。6歳の終わりに胃がんが見つかり、当時の貯金をはたいて、麻布大学の信田教授チームによる大手術を受けたのです。
術後のべべは、これでもかというほどに痛々しくて、私はその姿を見て、涙が止まらなかったです。
けれど、べべは、16歳半まで生きました。
つまり、胃がんの手術を受けてから、9年以上生きたことになります。
フラフラじゃありませんよ。
多少の食事制限や投薬はあれど、驚くほど元気に生きたのです。
べべについては、あのときの選択がまちがっていなかったと、私は思っています。
2017年に撮影した、16歳の頃のべべ(胃がんの手術から9年半経過しています)
ね? べべはちゃんと白髪の目立つ「いいおばあちゃん」になったでしょ?
べべ以外にも、うちのお子たちには、全員同じスタンスで取り組んでいます。
ちなみに、自覚症状がなかったべべの胃がんを、検診で見つけてくれたのは大巻先生。発見がむずかしいのに、かすかな違和感を見逃さずに、よく見つけてくれました。
麻布大学の信田教授チームに頼んで、むずかしいオペをスピーディーに手配してくれたのも大巻先生。手術に立ち会い、術後の大変な入院管理もすべて大巻先生が担当してくれました。
大巻先生は、べべと私の命の恩人そのものです。
皆さまは、「なぜ大巻先生がべべの胃がんを見つけたのに、大巻先生が直接手術をせずに、手術はほかの大学病院の先生が、チームで行ったのか」を、不思議に感じませんか?
そここそ私が、大巻先生をもっとも尊敬するところです。
べべに胃がんの疑いがあった当時、大巻先生の病院には内視鏡設備がありませんでした。
大巻先生は、べべのレントゲンに写ったわずかな違和感をもって、べべが胃がんであることを突き止めたのです。大巻先生に精密検査を勧められて、後日私は、設備の整っている病院へ、べべを連れて行きました。そこで、べべは胃がんであることが、確定したのです。
べべの胃がんをどうするかをめぐって、大巻先生と交わした会話を、私は一言一句おぼえています。
先生「田辺さんは、なにを望みますか?」
私「私はできれば根治を目指したいです。そして、べべに日本でいちばんの医療を受けさせたい」
私「大巻先生が手術してくださるのですよね? (転移する前に)なるべく早くお願いします」
先生「なるほど。わかりました。でも、田辺さんがべべちゃんに【日本でいちばんの医療】を望むのであれば、ぼくの病院の設備では不十分なので、ぼくは切れません」
私「え? ……では、だれなら、べべを切れますか?」
先生「日本でいちばんは、(当時の話です)麻布大学の信田教授とそのチームです」
私「え、でも、かかったこともないです。どうすれば、その方にべべを切ってもらえますか?」
……それからは、大巻先生のツテを使い、あらゆる方策を立て、無事、信田教授チームにお願いすることができました。大巻先生の尽力で、ものすごい速度で、私の悲願が叶ったのです。
「べべちゃんにとって、日本でいちばんの医療を望むなら、それはぼくではない」
フラットにそう言い切って、べべの最良をいっしょに模索してくれただけでなく、手術以外の一切を引き受けてくれたこと、私は死ぬまで忘れません。実際にべべの手術をしてくれた信田教授も、大巻先生の胃がんの見つけ方には脱帽したと感心していました。
お友だちのお子や、卒業生たちを含め、私の周りのお子たちをたくさん助けてくださいました。
小さな衝突もしたし、人としては不器用な方ですが、徹底的な論理思考が私は大好きでした。
さぶのことも、最後まで親身になってくれたよね。
うちで看取るのが私の目標でしたが、もし、叶わないとしても、大巻先生の元なら、納得の範疇でした。それ位、アットホームで、さぶにとって居心地が悪くなさそうだったのです。
さぶは入院が長かったけど、わかってくれていた気がします。
私は、大巻先生やスタッフに抱っこされているさぶがかわいくて仕方ありませんでした。
闘病時代の写真は、苦しい思い出でもありますが、さぶが立派に闘った証です。
だから私は、病院にいるさぶの写真も、とっても大切です。
入院している間も、例外なく毎日さぶの元に通いました。欠かさず会っていました。
そして最後は、私の希望通りになりました。
自分の家でさぶを看取る。
さぶは穏やかにさぶの幕を閉じました。
病気は憎いけれど、いい闘病をさせてもらえた。
改めて、大巻先生をはじめ、うちのお子たちを正しく診てくださった先生方に深謝いたします。
長くなりましたね。
つい感情が溢れてしまいました。
お読みくださりありがとうございました。
LOVE
ペットシッター「にくきゅうのおせわ屋」をはじめました
お留守番をがんばるかわいい家族が「お帰り!」と目を輝かせて出迎えてくれるよう、安心・安全に最優先で心を込めてお世話します。
足立区・荒川区・文京区を中心に活動してますが地域のご相談やお世話内容など、
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