今日は少し長くなりますが、どうぞおつきあいください。
どうやら、話は月曜日からはじまったようです。
あの日左足がどうしようもないほど痛まなければ、私は茶トラと出会わなかったでしょう。
火曜日、母に紹介された整形外科へ行くことに。実は当初他の病院へ行こうとしてギリギリまで迷っていたのです。交通手段も電車にするか車にするか?
結局なんとなく車に乗り母紹介の病院へ行くことにしたのが午後3時過ぎ。
我が家から病院までは車で25分。
4時前に病院の向かいのコンビニに着いて車を停めました。
車を降りようとした次の瞬間、私の目の前に茶色の物体が飛び込んできたのです。
あっ猫だ! 危ない!!
交通量の著しい大きな道路目がけ猫は疾走し、車の海のわずか手前の植え込みで止まりしゃがみこみました。
(ジャー……)
あ、おしっこしてる。植え込みが茶トラのトイレか……
道路と歩道の間が植え込みで仕切られているものの、交差点になっているその場所はだれが見ても極めて危険地帯だと思います。
1m……いや50cm先は「墓場」。
気づくと私の体は勝手に動き出しました。
コンビニで猫フードを数種類調達し、茶トラに近づき一口分投げて与えてみました。
少々間を置いてからフードを食べ始める茶トラ。
うん。食欲はある。
つづいて車に戻り捕獲に使えそうなものを探してみることに。
トランクからケージと犬用の後部座席用シートと犬のリードを取り出し、急いでセットしました。
茶トラを食べ物で釣りケージ内に誘導。
ケージに入ったらリードを引っ掛けたケージの扉を一気に閉める作戦。
でも、怖がってなかなか入らないのです。
またたく間にケージの中はからあげやシーバやかつおバーであふれ返りました。
折を見てはこれでもかというほどのごちそうをコンビニで買ってきたのです。
興味と食欲はあるものの、ケージの扉をまたぐ勇気が茶トラにはありませんでした。
そばにいた私の気迫も感じ取ったのかもしれません。離れたいけれど、離れたらケージの扉を閉められない。手動の捕獲箱だから近くにいるしかないのです。
交通量も人通りも非常に多い場所なので「通行人」「見物客」もネックでした。
ふだんは若干の社交性がある私でも、こういうときは極度の「人嫌い」になります。
頼むからそっとあっちに行って。見ないで。話しかけないで。
何名かはアイコンタクトで通じました。
何名かは軽い舌打ち(本当にごめんなさい・汗)で通じました。
そして何名かはリードを持たない方の手のシッシポーズ(超ごめんなさい責めないでお願い必死だったの)で通じました。
でも、中には大声で
「なにやってるんですかー?」
「あ猫ちゃんだ! かっわいいーー!」
「捕まえるんですか? 捕まえてどうするんですか? 飼うんですか?」
などの詰問攻めをしてくる方がいて、警察官の尋問にあっているようで心苦しかったです。
逆に舌打ちしてくる方も^^;
可能な限り説明させてもらいましたが、正直、この場所で保護するのは至難だと感じました。
茶トラは近寄ったり離れたり
黄色い葉っぱの向こう側は死の大道路です。追い詰めて車道に飛び出されたら一生後悔してもしきれません。極度の緊張と足の痛みと寒さで疲れを感じました。
時刻は夜6時半に。
不適切な表現ですが、猫の保護は私にとってギャンブルに似ています。あと30分、あと1時間、あと30分……そうして終わりが見えなくなるのです。
2時間半粘ったのですが、この作戦では厳しいと悟った私はいったん家に戻ることに。
病院は6時までだったので、足の診察は諦めました。
車を飛ばして自宅に帰り、厚着し捕獲箱片手に再度現場へ
消えているか心配でしたが、茶トラはまだ植え込みの中に佇んでいました。
ぽつん。
忘れ物のように。
ケージでの派手な捕獲劇は周囲の注目を集めましたが、独りになった小さな猫は誰にも見てもらえませんでした。
人々が足早に歩き去る中、茶トラだけがじっと変わらぬ場所にいたのです。
その姿が切なくてたまらず、私は小声で言いました。
「迎えに来たよ。一緒に帰ろう」
捕獲箱をセットし、今度は車内から見守ります。
私が近くにいると警戒しちゃうから。
そのうちコンビニ前には若者がたまりだし、地面に座って奇声を発し出しました。
人のこと言えないけど、邪魔だし、うざかったです。
帰らなければならない夜8時半をまわっても、茶トラは箱には入りませんでした。
諦められなかった私は、コンビニに入って正社員を捕まえ、協力を仰ぐことにしたのです。
お願いしつくしたら、事情のわかる方が捕獲箱の設置を許してくれました。
なんでも、茶トラはお店の裏側にもよく行ったりするそうでお店も困惑していたようです。
正社員数名が常にいるとのことでしたので、捕獲箱の設置方法を伝えました。
寒い中、真剣に聞いてくれてうれしかったです。美しく聡明そうな方でした。
私が帰ったあとも、お店の裏側に設置してくれることを約束してくれたのです。
犬猫のことでは自分以外の誰かを信じることがむずかしい私でも、信用できそうな方でした。
「箱に入ったらすぐ連絡します。深夜でも構いませんか?」
「もちろんです。お願いします」
そう約束を交わしやっとコンビニを出て帰宅したら、リルが布団をめちゃくちゃに^^;
そしてその晩から風邪をひいてしまい、踏んだり蹴ったりです。
次の日もその次の日も体調が悪い上、会社を休めず現場に行けませんでしたが、コンビニには何度か電話を入れ店長さんにもごあいさつさせてもらいました。正社員の女性同様、店長さんも責任感のあるやさしい方で安心しました。
木曜日深夜2時半、風邪薬と安定剤を飲みウトウトしていたら、ついにかかってきたのです。
「猫が捕まりました」
あああ。
どうもありがとう。
母の力を借りて迎えに行き、703号室の洗面所に入れました。
いらっしゃい。ずっとこうなればいいなあと願っていたよ。
あなたを捕まえようと躍起だったあの日の夜、私はマンションの下で五円玉を拾ったんだよ。
一度通り過ぎたけど、落ちているのが五円玉だと気づいて踵を返したの。
なんかすべて偶然かもしれないけれど、そうとも言い切れない気がする。
今はまだドキドキするね。
でもすぐにわかるよ。
あなたがいた場所は、あなたには似合わない。
過酷なサバイバルの中を生きるのではなく、私のおせっかいだけどあなたにはただ緩やかな家猫になってもらいたい。
「希望に生きる」
その手伝いを私がさせてもらうね。
ようこそ我が家へ♪
書きながら幸せを噛み締めています。
皆さま長い文章読んでくださってありがとう。
LOVE!
ペットシッター「にくきゅうのおせわ屋」をはじめました
お留守番をがんばるかわいい家族が「お帰り!」と目を輝かせて出迎えてくれるよう、安心・安全に最優先で心を込めてお世話します。
足立区・荒川区・文京区を中心に活動してますが地域のご相談やお世話内容など、
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