やっぱり私は行くことにしました。
朝起きて、いつも通り犬達を散歩へ連れて行き、ご飯の支度をして、チチを起こし、身支度を整え、車に乗り込みました。今日は一人のドライブ。
何処までも晴れ渡った空の下、1時間半かけて向かいました。
以前里子に出して、この前の3月14日に亡くなった、風太の家に。
風ちゃんが生きていれば、26日に訪ねる予定でした。
カレンダーにも、そう書き込んでいました。
久々に会う風ちゃんが、どんなに幸せにしているか、どんなにのびのびと愛されているか、お客さんが来ても、堂々としているそうだから、きっと私にも懐いてくれるかな。もしかすると会うのは最後になるかもしれない、風ちゃんに残された時間は、長くないのかもしれない。
風太の死を書いて、しばらくすると、私はやっぱりどうしても風ちゃんに会いたくなって、Iさんに無理を言って訪ねることにしました。
「風ちゃんはもうお空かもしれませんが、会いたいので伺ってもいいですか?」
「ええ、どうぞどうぞ。大歓迎です」
車で向かう途中、私は風太をキャリーに押し込み、お届けに来た日の事を回想していました。風太はキャリーの中で、ただただじっとして、信号待ちの度に、キャリーの中を覗く私を不思議そうに眺めていました。
「ぼくは何処へ行くの?」
「いいところよ」
私達は無言の会話を交わし、1km、又1kmと幸せに向かって車を走らせる。
もうすぐもうすぐ。
もうすぐもうすぐ。
風太の未来は、もうすぐそこだから、もうちょっとの我慢ね。
そんなことを思い出していました。
見覚えのあるゴルフ練習場に着いて、風太が入ったキャリーを背負って、ここから歩いていったことを思い出し、その近くのコンビニからIさんに電話をかけ、迎えに来てもらいました。
心地よいお宅へお邪魔して、可愛い先住猫ちゃん達のお出迎えですっかり嬉しくなった私がリビングを見回すと、50以上の風太がお出迎えしてくれていたことに気が付きました。
風ちゃん……。
そう。壁一面、風太の写真だらけ。
あちこちあちこち。全部、風太がこの家で刻んだ時間を物語るものばかり。
先住猫ちゃんと遊ぶ子猫のような風太。
お腹を出して太陽を浴びる風太。
キッチンでおねだりする風太。
ヨーグルトの容器に顔を突っ込んでる風太。
こちらを見つめる風太。
いたずらっぽい顔、寝顔、横顔、後姿、朝、昼、夕、そして夜。
あああ、風太。
風太はちゃんと居たのね。
風太はこうして、こうして毎日を過ごし、こうして生を全うしたのね。
風太にとって、この場所は、もう既に天国であったのね。
風太は生きながら、天国に居たのね。
カメラが捉えた風太は、ただ日常を満喫して、ただ幸福の中に身を置き、ただ猫らしく生きていました。私は胸がいっぱいになり、Iさんに頭を垂れる以外、どうすればいいか、うまい言葉が見つかりませんでした。
しばらく色々お話して、ランチをご馳走になって、駐車場まで見送ってもらい、私は又、1時間半のドライブで家路に着きました。
スーパーへ寄って、夕飯のおかずを買い、703号室に戻ると、涙がどっと流れました。
それを拭い、べべ達にただいまの挨拶。
「ただいま、べべ」
「ただいま、ナナ」
「ただいま、リリ」
「ただいま、ほほ」
「ただいま、あまた」
「ただいま、かつくん」
お母さん帰ったよ。
風ちゃんに会えたよ。もっと早く会いに行けば良かった。
だけどちゃんと会えたの。
さあ、お前達はおやつにしようね。
「風太に会えて良かったね。今日も愛のポチをよろしくね。かつくんより」
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