さぶくんへ
あなたが手の届かない場所に旅立って、二週間が経ちます。
この二週間、私はスケジュールに入っていた仕事を、ベストを尽くしてがんばりました。
あなたの容体が急変したあとも働いたし、あなたといられる最後の日も、チチにあなたを託して、私は数時間、家を飛び出して、仕事へ行きました。言うまでもなく、断腸の思いでした。
私は自分の都合で穴を開けるわけにもいかない職種だし、お客さまとの約束は大切なのです。
でもせめて、移動時間だけは、「ドラえもんのどこでもドア」がほしかった。
あれほど「ドラえもんのどこでもドア」を望んだことはありませんでした。
とはいっても、今月は仕事が落ち着いていたので、最後の日は、ゆっくりいっしょにいられたね。
あなたを離すもんか、どこにも行かせるもんかと、最後の瞬間(23時56分)まで、あなたを抱っこしつづけました。私は、さぶが好きでたまらないのです。どうしようもなく、心がえぐれるほどに。
二週間前の今ごろ、あなたは、出たことのないバルコニーに出て、穏やかな表情でくつろいでいましたね。儚く、そして美しいあなたが、私は心底、愛おしかったです。あなたの顔を眺めながら、私はグチャグチャの心を鎮めようと、内なるもがきを繰り広げていました。気づいていましたか?
さぶ、どうしようね?
「さぶ、風が気持ちいいねえ、さぶ、いいねえ」
私なりの精いっぱいの明るい(ぶった)声掛けに、あなたは、ときどき、細く目を開けて、アイコンタクトで答えてくれました。聡明なあなたは、私の弱さを見透かして、あなたらしい気づかいをくれたのだと思います。さぶ、ありがとうね。さぶ、好きだよ。でも、なんで、こんなに苦しいの?
好きだよ。
あなたとの思い出と向き合うのは、まだ時間がかかるかもしれません。
その間に、私は「日常生活をひたすらに繰り返す」というシンプルな作戦を立てています。
一気にやろうとすると、ダムが崩壊するからです。
自分を守るために、しばしあなたを、心の隅に寄せておきたいのですが、実はこれもまた、簡単ではないのですよね。あなたはいつも、どんなときも、私の真ん中にいたから。
さぶ、あなたの火葬の前日に、私は慄いていました。
私はあなたの姿を失うことに耐えられる自信がなかったのです。
そんな私の元に、どういうわけか、小さな女の子がやってきたのですが……
偶然だとしても、あなたの「はからい」を、私は感じてしまったのです。
マンションの下で大声で鳴いていた女の子を、私は捕獲箱で家に招きました。
あなたが、私を忙しくするために送り込んだと、私は勝手に想像しています。
さぶ、ちがいますか?
おかげで、さようならのお式のあとは、泣いている暇がありませんでした。
女の子を病院に連れて行かなければならなかったのです。
ふみ、と名づけた白系の毛色の女の子が、私の横をよぎると、ふと「さぶ?」と錯覚するのです。
まだほんの子猫なのに、聞き分けがよく、信じられないほどの甘えん坊なのですよ。
さぶ、見ていますか?
ふみちゃんが、さぶの定位置にちょこんとおさまっています。
ふみちゃんがあたたかいので、とても助かっています。
いちばん堪える深夜も、ふみちゃんがいっしょにいてくれるのですよ。
さぶ、あなたらしい、有意義な贈り物ですね。
ふみちゃんとの時間を堪能しつつ、ふみちゃんのご縁を探していきます。
さぶ、私に素敵な役目をくれてありがとう。
あなたがいなくなって、703号室は、ガランと静まりました。
あなたがかわいがってくれた、すずらん、ちゃみ、保護猫きなもんが、元気をなくしています。
けれど、少しずつ少しずつ、みんなで前に進んでいきますね。
今後もあなたへの思いを、くどくどと書かせてね。
あなたの自慢も、全然し足りないのです。
さぶ、さぶ、私のさぶへ
地上より愛を込めて
ペットシッター「にくきゅうのおせわ屋」をはじめました
お留守番をがんばるかわいい家族が「お帰り!」と目を輝かせて出迎えてくれるよう、安心・安全に最優先で心を込めてお世話します。
足立区・荒川区・文京区を中心に活動してますが地域のご相談やお世話内容など、
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