2週間ほど前に突如近所で見知らぬ猫に出会いました。
卒業ホヤホヤのウイあらためむぎに似た風貌の子。たぶんオス。むぎと同じテリトリー内です。
当然、私は病的に保護したくなり、連日深夜に捕獲箱を設置しました。
私はマンション住まいなので捕獲箱を設置するまでに時間がかかります。猫を見かけてから上階に箱を取りに戻っている間にほとんどの場合、見失ってしまうのです。
見かけてから仕掛けるのですべてが後手後手にまわるのですが、それでも、姿の消えた猫が近くにいてくれているはずだと信じて仕掛けるしかありません。
いつも4時間程度粘ります。手を変え品を変え、箱の中をとびっきりごちそうの宝庫にして。
でもいったん姿を消した猫が再び箱の前に現れることは一度もありませんでした。
先日は勇気を出して午前中から箱を仕掛けることにしました。
「勇気を出して」とは文字通りの意味です。
私の住む町で猫の保護に理解を示してくれる人はほとんどいません。無理解を超越して嫌悪感露骨の住民ばかり。
糞尿、騒音……猫は厄介な生き物だから町からいなくなってほしい。
ある意味、保護を考える私との利害関係が一致しています。
私も汚れた町から猫を救い出したい、そう思っていますから。
だけどいなくするために設置する「箱」の置き場に話が及ぶと、想像力の欠如した住民たちは首を横に振るばかりです。
面倒や迷惑をかけないことを説明しても「面倒だ」「迷惑だ」の一点張りで箱の設置を許してくれません。猫1匹が入る小さな箱を邪魔にならぬようそっと数時間置かせてもらえる場所が私には1箇所しかないのです。
いろんな意味でこの場所は猫を保護するのに適しているとは言えません。だけど選択肢がない以上、ここでやるしかないのです。
もうひとつの切実な問題も。
考えてみてください。
もし皆さまが猫だったら「満腹時」に危険を冒して捕獲箱に入りますか?
私なら入りません。
お腹がいっぱいの状態ではどんなごちそうにも見向きしないでしょう。ましては、箱の中に入ってわざわざ食べに行くなど勇気も要ることです。
そこで私は、うちの近所に唯一ある餌場(老人宅)に数時間餌を置かないようお願いしなくてはならないのですが、これが毎度毎度、筆舌に尽くしがたいほどの至難です。
私、かれこれこの老人とは7年以上付き合っています(笑)。
老人宅の餌入れにはほぼ24時間餌が山盛りになっています。
一見、飢えている野良猫たちにごはんを提供するやさしいご老人だとの見方もあるでしょう。でも、野良猫の問題を熟知している方は私の考えをわかってくれると信じています。
老人宅やその周辺の衛生状態は極めて劣悪で、未去勢の猫たちはケンカはもちろんのこと、足に釘が刺さったり、少しの傷が致命傷的に膿んだり、やぶ蚊に襲われ顔を腫らしたり消耗が早いです。臭いもひどい。
結果、老人宅の周りに暮らす住民は、必要以上に猫嫌いになります。
老人には手を出せないので、猫いらず(毒)を撒いて猫を駆除しようとしたり、猫の侵入を拒む鉄線を各々の自宅周辺に張り巡らせたり……。
老人自身も、猫をかばい、名をつけかわいがるタイプではなく、個体識別もせずノータッチで餌だけを撒く始末。役所などが介入したときは面倒がって「猫なんか飼ってない、世話をした覚えもない。猫なんか知らん!」などと言います。
ただ、どういうわけか「餌やり」という行為に対する執着だけは強く、汚い器にモリモリ餌を満たすのです。ねずみを捕るという主張もたまにしているようですが、家に猫を入れていないのに、ねずみを捕るから猫を外に置いておくといわれてもねえ……?
話が長くなりましたが、そんなわけで私は、老人宅に撒かれた餌が障害となって猫の保護が思うようにいかないので、過去にはコソコソ侵入し、勝手に餌を捨てる良からぬ行為もしました。常識的ではないかもしれません。でも良識は持っているつもりです。
今回はそれだけでは厳しそうだったので、間にある男性を入れ、数時間餌の入った器を撤去させてもらうようお願いしたのです。そりゃもう丁重に。ほとんど土下座に近い形でした。プライドも正論もかなぐり捨て、ひたすら老人のご機嫌を取り頭を下げたのです。
菓子折りを手に、笑いたくもないけど、へらへら笑って見せたりもしました。
「数時間だけごはんを置かないでください」
さすがに気をよくしたのか? 一度は頷いた老人でしたが、約束は守られるどころか、2時間後の見回りで餌がさらに盛られていて驚きました。
「え……盛ってる……」
しばらく呆然としていたら、家の外に出てきた老人と鉢合わせ、ついに対峙してしまったのです。
「おれが飼っているみたいなもんだから猫を連れて行くのはダメだ!!」
「(私が保護しているから)猫がめっきり減ったじゃねーか!」
「もう来るな!!」
降り出した雨の中、私は孤独でした。
怒号をあげる老人を凝視していたら、急に悲しくなったのです。
だめだ、猫の幸せとか、そういう論理、通じないや……
そして老人の二枚舌をなんとなく醜く感じました。
たしかこの人、近隣の苦情で役所が来たときは、猫なんか飼っていないって言ったのに、今、目の前の私には「飼っているみたいなもん」だって。
「飼っている」と断言しないあたりにも責任の所在をうやむやにしたい下心、計算が見えげんなり。
そして考えているうちにこんがらがってきて、猫を守ろうとしているのが自分なのかこの老人なのか一瞬わからなくなってしまったのです。
それでも諦めたくなかったので、明け方2時過ぎまで粘りました。その間、老人は私を警戒し、何度も外に出て餌を補充しています。他のお宅の敷地内に設置した私の箱の中に猫が入らないよう。
難易度が増すばかりなので、いったん老人の警戒心を解こうと思いました。私自身もクールダウンしなければ精神が持ちません。家のことを疎かにするとチチが怒るし、うちのお子たちも不憫です。
明日朝もう一度仕掛けてだめなら、いったん引いてみよう。
そう決めて昨日、うちのマンションのすぐそばに場所を変え箱を設置しました。以前、野良猫たちがふと通りかかったことがあった場所です。
そうしたらこの子と出会ってしまいました。
はじめてみる顔です。
未去勢で警戒心が強く、恐ろしく汚れているので飼い猫ではないはず。近所は茶白だけになったと思っていたのですが、どこから流れてきたのか、他にもいたんですね。毎日犬の散歩で近所をうろついているのにぜんぜん知りませんでした。
狙っていた茶白は、老人宅を縄張りとしているのでしばらくは手出しができなそうです。茶白の保護は折を見て考えますが、これもなにかの縁かもしれません。まずはこの子をピカピカに磨き上げようと思います。
本日去勢手術を含む医療ケアのため入院させました。
病歴、年齢、性格などの詳しいプロフィールは私もよくわかっていないので、退院後改めてお知らせします。グチグチと長くなりましたが、お読みくださりありがとうございました。
今週は動物愛護週間ですね。
動物愛護週間なんてあってもなくても動物は庇護されるべきですが、私は1匹の猫を保護しました。皆さまもぜひこの機会にご自分の一歩を!
ペットシッター「にくきゅうのおせわ屋」をはじめました
お留守番をがんばるかわいい家族が「お帰り!」と目を輝かせて出迎えてくれるよう、安心・安全に最優先で心を込めてお世話します。
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