ベイブは宝箱に乗って

我が家には、とてもたいせつな保護猫王子がいます。

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人が大好きで、ひたすらに甘えん坊の、彼の仮名は「ベイブ」

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夜はこうして、ピッタリと肌を寄せ合って眠っています。

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真夏の熱帯夜は、正直少し寝苦しい日もありました。

 

 

彼は湯たんぽみたいにぬくぬくしているからです。

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でも、出会い方を考えると感慨深く、また、これからの寒い季節に彼が終の棲家で「家族をあたためる存在」になるのだろうと想像すると、私たちの心は満たされるのです。

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本日は、ベイブとのなれそめの6月初旬にワープして、皆さまにベイブをご紹介します。

 

 

あのときの私は、ある外猫さんを保護したくて、連日、捕獲箱を仕掛けていました。

 

 

ですが、うまくいかず、私が苦戦をしているうちに、目標の外猫さんが「メインのえさ場」から姿を消してしまったのです。広い生息テリトリーを持つ外猫さんは、おそらく、しつこく通う私を嫌ってどこかに身を隠したのですが、一連のできごとが、日々のえさやりを楽しみにしていた複数の人々を怒らせてしまいました。当然、私は肩身が狭く、身動きがしづらい状態になっていったのです。

 

 

狙っていた外猫さんを見失ってスカウトできないばかりか、だんだんと「悪者」みたいになっていく私は、自宅から離れたその場所に、どのように通うべきかを悩んでいました。

 

 

ベイブを停めっぱなしの古い自転車のカゴの中で見たのはそんな頃です。

 

 

ベイブは、私が保護したかった外猫さんが食事を摂っていた植え込みの、反対側にいました。

 

 

突如視界に飛び込んできたベイブの第一印象は、汚れていて、貧相。

 

 

“え、猫がいる。この猫、グルーミングをしたことあるんだろうか……”

 

 

ベイブの目ヤニ、鼻くそ、真っ黒な手足を今も忘れません。

 

 

私の前からいなくなってしまった外猫さんへの執着は残ったままでしたが、みすぼらしいベイブが頭を離れず、えやさりさんのひとりに、「この子も連れて帰りたい」と告げました。

 

 

しかし、その方からすれば、私の目的の猫さんがコロコロと変わるように映ったらしく、それが後々の人間関係に、さらによくない影響を及ぼすこととなったのです。

 

 

ちなみに、私が当初お招きする予定だった外猫さんは、私が通わなくなった数日後に現場に戻ってきました。そして、長年面倒を見てきた女性が、共に暮らす運びとなったようです。

 

 

二度目に会ったベイブは塀の上にいました。

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あれ? 今日は目ヤニと鼻くそがついていないのね?

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顔を洗ったの?

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まあまあハンサムじゃん

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なにやらおしゃべりをしているので、おやつをあげてみることに……

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頼む頼む。きみはどこにも行かないで。どうか私のところに来てください。

 

 

えさやりさんたちを説得しつつ、私はベイブをスカウトする準備を進めていきました。

 

 

一度、チチを現場に案内し、ベイブと顔合わせをしてもらって、自宅に入れる了解も得たのです。

 

 

決行日の夜、塀の上や自転車のカゴを覗いてベイブを探していた私は、意外な場所で彼を発見

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極寒の冬はいつもここで暖を取っていたと聞いて、胸が締めつけられて仕方がなかったです。

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きみは賢いねえ……

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こうやってひとりで、たくさんの夜を乗り越えてきたんだね?

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おいしいものが詰まった宝箱を用意してきたんだよ。

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この箱は「未来」への乗り物でもあるんだよ。

 

 

さあ、大丈夫。柵を越えてこっちに来てごらん

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様子を見に来たえさやりさんがソワソワするので、ベイブは警戒してしまいました。

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えさやりさんになんとかお願いをして家に帰ってもらい、私も離れた場所から見守ることに……

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来て、来て、柵を乗り越えてこっちに来て!

 

 

祈る気持ちで息をひそめ、待ちつづけること1時間

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宝箱に入ろうとするベイブのお尻が撮れたのです。

 

 

入った! ありがとう。どうもありがとう。幸せにするからね!

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翌朝、不安になったえさやりさんは、私との電話口で、ベイブを元居た場所(外)に戻してほしいと言いました。みんな(いろんなえさやりの人々)が、私を訝しく感じている、私を信用できない、と。運転免許証まで提示し、数えきれないほどの話し合いを重ねてきたのに残念です。

 

 

けれど、私がいちばん残念に思ったのは、返してほしい場所が「外」であったことです。

 

 

ベイブは死ぬまで、外で生きなければならないのでしょうか?

 

 

私に取られて悔しくなって、彼を自分の力で守りたいと訴えてくる方はいないのでしょうか?

 

 

彼を失ってさびしくて、彼のそばにいたいと名乗りをあげてくれる方は?

 

 

だれの責任も及ばない「外」は、ベイブにはふさわしくない。

 

 

彼の命は、軽々としたものではないのです。

 

 

うちに着いたベイブは、なるべく小さくまとまって、ケージの隅でブルブルと震えていました。

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赤ちゃんの頃から外で生きてきたベイブにとっては、大事件だったのでしょう。

 

 

でも家の中にこそ、本当の自由があることを、私はベイブに伝えていきたいと決心しました。

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※現在は、えさやりさんとの問題が円満に解決していますので、ご安心ください。

 

 

ベイブは、キラキラした目であの部屋この部屋を飛びまわっています。

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保護猫ベイブは、家族募集中です。

 

 

努力家でやさしくて、人をほっこりさせるビジュアルです。

 

 

ベイブ(推定4歳)は、この上ないほどの素敵な猫さんです。

 

 

LOVE

 

 

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